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【特集3】イサム・ノグチとかがわ 時空を超えた贈り物

イサム・ノグチとかがわ 時空を超えた贈り物

イサム・ノグチ庭園美術館の写真
©2018 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, New York/ JASPAR,Tokyo G1341 イサム・ノグチ庭園美術館
©Yukio Futagawa

 彫刻のみならず舞台美術や家具、遊具など、幅広い活動を展開し、さらには空間芸術としてモニュメントや公園の環境設計などの仕事に着手し、まさに20世紀を代表する総合芸術家であるイサム・ノグチ。世界から注目を浴びるその芸術家は、晩年、香川県牟礼の地に住居兼アトリエを構えた。イサム・ノグチにとって、香川県とはどういう地であったのか。没後30周年の今年、その足跡を香川の地にたどってみたい。

ISAMUNOGUCHI

マップ

【遊具彫刻】
❶ 中央公園 高松市番町1-11
❷ 一の宮公園 観音寺市豊浜町姫浜55-2
❸ 五色台少年自然センター 高松市生島町423〔2019年3月まで見学不可〕
❹ さぬきこどもの国 高松市香南町由佐3209
❺ 屋島レクザムフィールド 高松市屋島中町374-1
❻ 山椒山公園 高松市牟礼町牟礼2778−28
❼ 津田の松原SA(下り) さぬき市津田町鶴羽939-1
❽ 小豆島オリーブ園 小豆郡小豆島町西村甲2171

イサム・ノグチ氏の写真
Photo:Michio Noguchi

イサム・ノグチ《アーケイック》1981年の写真
イサム・ノグチ《アーケイック》1981年
香川県立ミュージアム
※9月末まで貸出中
Photo by Akira Takahashi
©2018 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, New York/JASPAR,Tokyo G1341

 「日本は世界に教える重要ななにかを持っている」と、イサム・ノグチは語った。日本は父の国であり、母と共に幼少期を過ごした特別な場所である。そのノグチが、幾度かの来日を経て、香川県を訪れたのは50代になってからであった。

※イサム・ノグチ「1986年度第2回京都賞精神科学・表現芸術部門受賞記念講演」より、求龍堂出版「イサム・ノグチ庭園美術館」から抜粋。

 当時、県ではデザイン知事との異名を持つ金子正則が手腕を発揮していた。猪熊弦一郎や県庁舎を設計した丹下健三と交流があり、そうした人脈からノグチとの交流が始まる。ノグチが石の作品を制作するための場所を探していると聞いた金子は、芸術家コロニーの構想を抱いていた小豆島を推したが、ノグチから良い答えは返ってこなかった。

 1964年、金子の案内で訪れた牟礼で、ノグチは「石のアトリエ」主宰の和泉正敏と出会う。牟礼は、銘石「庵治石」の産地として知られる。この花こう岩は、水晶に近い硬度を持ち、二百年を経ても彫られた字が崩れたり、変色したりしないといわれている。それだけ硬い石を扱うには、卓越した技が必要だ。ノグチは、その石工の技にほれ込んだのだ。さらに、ノグチが制作するのは抽象作品である。完成するには斬新な手法、実験的な試みに応える技、そして、体力と情熱も必要であろう。それに応えたのが和泉であった。和泉と共にただひたすら石と対峙(たいじ)でき、仕事に打ち込めるという理由で牟礼の地を選んだ。

 また、ノグチを支えた人物に当時、香川県建築課の職員であった山本忠司がいる。建築を愛し大いに理解した金子知事の下で、丹下健三をはじめとした名だたる建築家の仕事を間近で学び、自らも瀬戸内海歴史民俗資料館などの魅力的な建築を残した人物である。この山本は丸亀藩旧入江家住宅の移築を手助けし、ノグチは牟礼での住居「イサム家」を完成させた。1969年に構えたアトリエと住居は、その後の作品にとって重要な拠点となり、次々と石の作品が生み出される。

 1986年、ノグチは庭園彫刻を「一種の空間の人間化、彫刻の人間化」と語り、「いたる所に行きましたが、わたしはいつもどこかくつろげる場所、役に立てたと感じられる所を探して航海していました」※と話した。牟礼のアトリエは、その最後の場所となり、2年後にニューヨークで帰らぬ人となる。この地の重大さを知る丹下健三、谷口吉生、三宅一生などの協力も得て、イサム・ノグチ日本財団が設立され、「イサム・ノグチ庭園美術館」開館となる。ノグチは、この地を「未来への贈り物」と称しているが、今なおノグチのまなざしを感じるこの場所で多くの人々がノグチからのメッセージを受け取っている。

 庭園美術館の他にも、香川県立ミュージアムと高松市美術館で作品を常設展示している。どちらも、ノグチが愛した牟礼のアトリエのように静けさが作品を包み、心ゆくまで鑑賞できる。香川県では、子供たちも気軽に作品と戯れている。ノグチがデザインした遊具彫刻があちこちに置かれているのだ。また、高松空港ではノグチの遺志を継いで和泉が完成させた「タイム&スペース」の作品が時を超えて人々を迎える。

 今年はイサム・ノグチ没後30周年。年を経ても色あせるどころか、香川県においてますます存在感を増すイサム・ノグチ。その面影をたどって、香川の地を巡ってほしい。(本文中敬称略)

オクテトラの写真
オクテトラ(中央公園)

香川県立ミュージアム
高松市玉藻町5-5
TEL 087-822-0002
月曜、年末年始休館
/9時〜17時
作品:アーケイック(玄武岩・1981年)ほか

高松市美術館
高松市紺屋町10-4
TEL 087-823-1711
月曜、年末年始休館
/9時30分〜17時
作品:山つくり(亜鉛メッキされた鉄板・1982年)ほか

高松空港インフォメーションセンター
高松市香南町岡1312-7
TEL 087-814-3355
作品:タイム・アンド・スペース(庵治石・1988-89年)
※作品は屋外にございます。交通事故などの危険があるため歩道から鑑賞してください。

イサム・ノグチ庭園美術館
高松市牟礼町牟礼3519
TEL 087-870-1500
往復はがきにて申し込み制
開館日は火・木・土
/10時・13時・15時
1969年にイサム・ノグチが構えたアトリエや住居と共に150点余の彫刻作品と彫刻庭園を公開。