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【香川から世界へ】世界に誇る逸品XII[番の州臨海工業団地]

番の州臨海工業団地の写真

世界をリードする大工業団地

世界に誇る瀬戸大橋、そのたもとに広がるのは「番の州臨海工業団地」である。
戦後の高度成長期、瀬戸内海を行き交う船は
増加と大型化の一途をたどり、備讃瀬戸航路の整備は急務であった。
通称「番の州」などの浅瀬がある一帯に、航路整備で生じた浚渫(しゅんせつ)土砂などを投入。
瀬戸内海航路の要衝に位置し、地質、地耐力が優れ、
自然災害が少ない理想的な大工業団地が誕生したのだ。
次々と立地した企業は、革新的な技術により、世界に名高い製品を生み出している。
今回は、その中の二つの企業を訪問した。

世界最高の技術を誇る造船工場

 1965年から造成が始まった番の州臨海工業団地に最も早く立地したのは、1967年に操業を開始した川崎重工業坂出工場である。ここは、約91万平方メートルの敷地面積を有する日本有数の大型造船所。大型タンカー23万トンの連続建造、42万トン超大型タンカーの建造などを行い、1981年にはアジア初のLNG運搬船を誕生させた。

 工場は二つの建造ドック、進水後の艤装(ぎそう)を行う四つの岸壁、完成時の最終仕上げに使用している一つの修繕ドックがあり、最高で6隻の船が同時に建造や艤装などを行うことが可能である。現在、主に手掛けているのは、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)といった液化ガス運搬船だ。LNGおよびLPGは、燃焼時の二酸化炭素の発生量が少ないなど、地球環境に優しいクリーンなエネルギーとして、世界中で需要が高まっている。特にLNGは、天然ガスを冷却・液化してマイナス162度の液体にしたもので、極低温に耐える安全性の高いタンクが必要である。川崎重工業のLNG運搬船のLNGタンクには、独自に開発した世界最小の自然気化率を達成した「川崎パネル方式」という防熱システムを採用するなど、世界に誇る安全性、信頼性を獲得している。

 こうした類いまれなる造船技術により、2018年1月までに実に321隻もの大型船が坂出工場で誕生し、世界の海に船出したという。

大型クレーンの写真
極低温に耐えるアルミ合金を使用した直径40mを超える巨大なタンクは組み立ての後、大型クレーン2基により船上に搭載される。

世界的な規模と技術力を誇る総合石炭化学工場

 番の州臨海工業団地で最大の敷地面積を誇る「三菱ケミカル坂出事業所」は、東京ディズニーランドのおよそ3倍の約168万平方メートルを有し、年間390万トンの高品質コークスの生産が可能な日本最大の「総合石炭化学工場」である。1969年に北九州・黒崎事業所のコークス炉の火を受け継ぎ誕生し、以降、製鉄用コークスの安定供給のため、その火は消えることなく燃え続けている。半世紀近い歴史の中でコールタール系ニードルコークスの製造技術を確立し、理化学技術分野の権威ある大河内記念生産賞も受賞した。

 コークスは主に国内外の大手製鉄メーカーに供給され、産業基盤を支える製鉄の原料となる。また、石炭を乾留する際に発生するコークス炉ガス(COG)は、自家消費されるほか、隣接する四国電力社の火力発電用燃料となる。精製過程で生じるアンモニアなどは、それぞれ工業原料として利用されている。

 また、坂出事業所の技術力は、現代の暮らしに欠かせない製品も多く生み出している。例えば、電気自動車などのバッテリーにも採用される高出力・高容量のリチウムイオン二次電池用負極材料、世界初の石炭ピッチ系高性能炭素繊維「ダイアリード®」、1600度の高温にも耐えるアルミナ繊維「マフテック®」などである。世界が注目する独自の製品を、坂出事業所から世界に向けて送り出しているのだ。

コークス炉の写真
三菱ケミカルコークス事業の中核工場として、瀬戸内海沿岸の製鉄メーカーに製鉄用コークスを配給するにも理想的なこの場所にコークス炉を建設。