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【特集1】海渡る世界の傑作。

海渡る世界の傑作。

 1988年4月、瀬戸内海を渡り、香川県坂出市と岡山県倉敷市を結ぶ瀬戸大橋が開通した。四国の人々にとって、本州と橋で結ばれることは悲願であり、まさに夢の架け橋であった。道路と鉄道の併用橋としては当時の世界最長。現在も世界最大級である壮大なつり橋は、大きな驚きとともに歓迎された。

 その開通から今年で30年となる。夢の架け橋は、1日2万台以上の車両が利用する当たり前の交通手段となり、暮らしの一部となった。橋の下を船が行き交う景色に、瀬戸内らしさを感じる人も多いだろう。思えば、景観に配慮し、橋の色をライトグレーにするよう提言した東山魁夷(かいい)画伯は慧眼(けいがん)であったのだ。

 一方で、橋の維持管理には大変な苦労がある。巨大な重量を支えるつり橋のメインケーブルは、架け替えがほぼ不可能で、メンテナンスの重要度が高い。端から端まで塗装するのに要する期間は約20年。計画的な点検を続け、200年の利用を目指している。四国から本州へ、また本州から四国へ。はるか先の世代まで、この橋を渡って人と物が交流していく。

 昨年末、うれしい知らせが届いた。ユネスコ世界遺産の諮問機関であるイコモスの国内委員会により、「日本の20世紀遺産20選」の一つとして瀬戸大橋が選ばれたのだ。これは、将来的に世界遺産に認定される可能性を示唆している。四国には新幹線開通に向けた動きもある。世界遺産の中を新幹線が走り抜けたら、どれほど素晴らしいだろうか。地元が誇る大橋に、新しい夢を見る30周年である。